2011年

2月度

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2011/2/11
AC-5試聴記(その2)

 さて、月を跨いでしまったが、アキュフェーズの新型MCカートリッジ「AC-5」の試聴感想。

 針を下ろしてみたトレースノイズレベルのSN比は、最近の新型強者針群(先月参照)並で、エミネントよりは少し小さいがごく普通というか最近の標準。つまり、L-1000よりは少しだけ大きい。(L-1000は特に少ないので負けるのは仕方ない。)

 まず、初めにケージのピアノ(Wergo WER 60099)をかけてみた。

 これはCDも出ているが、ADの場合はピアノの多彩な音色が全ての録音なので、機器の差が猛烈に出てしまう、超が付く程優秀な録音で非常に気に入っている。ピアノなので人間の可聴帯域で、最も敏感な帯域ばかりが入っている収録だから、ちょっとの差がモロに出るのだ。

 オーディオは音楽だけでなく、「音」を楽しむものだから、これは重要なのである。

 で、その音が出た瞬間、これは非常に明るいのでびっくり!。しかも、中低域から高域にかけての音の反応が素晴らしく良く、ハイトランジェントでハッとする程爽快痛快だ。それでいて、繊細微妙な音をよく再現して、まるで「耳がマイク」になったような感触に陥る。聴き込むのではなくて、音が向こうから自然に耳に入って来る感じだ。

 もたつきはゼロ、全ての音が聴こえる程透明度抜群、中低域から高域への抜けが良くフットワークが軽い、それでいて腰高なハイ上がりな感じはまったくない。低弦はガーン!と一発ハードに飛ぶように出て来る。足踏みの低音が実にリアル。これは良い。

 次に、M&Kのオルガン(RT-114)をかけてみる。これは超低域ばかりが有名だが、個人的にはむしろオフマイクの中高域の繊細なキレとホールの距離感との対比が一番気になる。

 が、これも距離感とキレのバランスが実に良く、細かい音が漏れなく聴こえて、それでいて輝きがある。その後はお馴染みの超低域が押し寄せるが、これがまた豪快で芯があり、何とエミネントGL並に出てしまうから大慌て。。。

 これが今回の一番の驚きだった。この対比が素晴らしい。

 重低音に関しては、これはエミネントシリーズが他の針群を寄せ付けない程に強力だ。構造上の問題(磁気特性)だとされるのでそう思いこんでいた。実際に、ヘリコンもオルトフォンも量感は同程度レベルまで行くが、芯の強力さと締まりはやはりエミネントが独自の世界を見せつける。確かにエミネントは一家言ある低域なのだ。

 しかし、AC-5を聴いたらこれが同レベルになるのでちょっとショックだった。。

 それでいて中低域から高域方向への揃った反応の早さ、特に「立ち上がり」の早さと繊細感と中低域の抜けの良さが上回っているので驚いてしまう。

 初めの第一音からして、スピード感と音の解放感が明らかに今までの針群と違うと感じる。しかも、音に色気と美しさを伴っており、単にシャープでハードなだけではないから素晴らしい。

 何で過去のモノまで分かるのよ?と言われるが、感性とはそういうものだ、なんて言うと「オカルトだ」と言われるので、説明を少々。

 オイラは確かにアナログも好き派だ、が、HTPCも使うので、実はPCのサウンドカードからRIAA後の音をASIO録音してあるのだ。それにはエミネントGL他の針の音も収録してある。当然AC-5も録音してみた。

 CDにまですると、勿論、元の音とは変化してしまうが、針ごとのキャラクターを思い出す、比較する、のには実は使えるのである。(注:元との音の差はかなり出るのは仕方ない。というか、この点はPCオーディオの音はまだまだムリだということは断言しておく。)

 これで収録した後の音を比べても明らかに違う。正直、今まで聴いた(先月参照)針の中では、一番の明るさとハイトランジェントなキレとハードな重量感のある低域を再現する。しかも、切れ込みは「危うくなる一歩手前」で確実に止まり、ヒヤリングによる詰めの成果を感じさせる。この部分は流石だ。中身はZYXだという話だが、仕上がりは確実に違うと実感する。

 例えるなら、材料は同じでも、シェフが違うと別の料理が出来上がるようなものかな。いや、むしろ、以前感じたZYXのやや物足りない部分を解消して良い方向にもっていったような味付けの妙味か。

 更に試聴にLAMANDIERの弾き語り(ASTREE AS59)を聴いてみた。弦の分解能が素晴らしく、ボーカルと混濁しないで実に美しく響くが、声は朗々と歌い上げる感じがとても明るくて、エコーものびのびと広がる。声は鋭いが行き過ぎないのに、モノ足らない感じは皆無。しかも弦のもたつきはゼロ。ここはややMC-L1000もエミネントGLも苦戦する。

 敢えて言うと、L-1000は調整がイマイチだとサ行の声が行くところまで行く(笑)、エミネントGLは声と弦の音程が僅かに低く感じるのでかぶりがある。

 音像の大きさは、AC-5はMC-L1000と比べるとやや大きくなるが、これは他の針群も同じなので、AC-5だけが大きいというわけではない。むしろ、上下バランスを考えると、最もバランスが良く実にまとめ方が上手いとも言える。この点は重要だ。

 これには参った。、というか、この音で出してくるとは思ってなかったので、正直、この時点でエミネントGLの導入に後悔を感じた、。

 音のイメージは、以前使用していたアンプに例えると、HMA-9500にどことなく似ている感触がある。(但し、HMA-9500MKIIではない。)

 困った、、というか、もう一ヶ月待てば良かった、と思った。それ位オイラの好みに合っているのだ。これは良い、本当に欲しいと感じるものがある。

 また、超ハイエンドばかりになってきている最近の針群に「オカルトで値段つけてない?」と言わんばかりの仕上がりに感じた。30万円以上の針群は、差別化にかなり厳しい実情となって来たかもしれない。音質差では10万円の開きがないに等しいからだ。

 兎に角、音が明るく生き生きとして楽しい。これは良い針が出てきたなあ、と言うのが率直な感想である。

 

 ただ、ここでちょっと冷静に考えてみる、。

 まず、今回の試聴環境についてだが、AC-5にとって、あまりにも「有利過ぎる」ようにも思うのだ。

 何しろ、オイラのプリはC-2800、イコライザーはAD-290とC-27、ヘッドアンプもC-17を所有している(今回は使っていない)。

 これでAC-5がエミネントGLに負けたら絶対にオカシイ、はず(笑)。当然だが、家族というか、アキュフェーズファミリーの中で謳う(?)わけだから、良くて当然かもしれない。

 イコライザーなんて、エミネントGLには分が悪すぎる。これは本来はトランス系推奨の針だ。

 また、ヘリコンは以前実験してみた限りでは、C-27とは相性が悪く、女性的なサウンドになるのでびっくりした。男性的サウンド針の代名詞に向かって何事か!と怒られるのだが、本当にウチではそうなるのだから驚いたのだ。が、AD-290で使うとこれが男性的サウンドで良いのであるから、イコライザーは極端に相性が存在するのも事実。

 また、フォノイコライザーの方式の問題もある。つまり、AC-5だけが、最近のトランス系の針群の中において、唯一ハイゲインイコライザー、またはヘッドアンプ系のメーカーだから(ZYXもそのようだ)、オイラの求める方向に合うのかもしれない・・・。

 ということは、、やはりAC-5がオイラの環境には一番なのかもしれない、。

 うーん、悩ましい。

 

 さて、最後にちょっと実験と検証をやってみる。そう、今度はAC-5をPH-L1000でも聴いてみた。PH-L1000は新品の予備を所有しているので、これを使い同じ環境で聴いた。

 実測では28g。EPA-100MKIIにはかなり不利だが、多少重りを附加しているので何とかバランスはする。

 で、音はどうかと言うと、、、これがイマイチなのである。。。

 低域はPH-L1000のがっちりして余分な響きのない硬く締まっていながら量感のある低域を再現するが、どうも先のハイスピードな良さが押さえられて、ちょっと印象が違う。

 これがとっても悩ましい。。何でなのか分からない。やはりアームに対して重すぎるのが原因か?それとも素材のマッチングが悪いのか?

 エミネントGLはPH-L1000でも純正のシェルと比べてハッキリと別の良さを出すが、AC-5は今回のZYXのハイエンドシェルLive18がベストマッチングなのか?いや、もっと合うのがあるかもしれない。

 そこで、AC-5を外して針カバーを付けてよく観察してみると、何とこの針はシェルに接触する側は、線接触なのだと気がついて驚いた、。裏がこんな状態なのだ。(写真参照)

 正直、Live18に対してかなり接触部分が少ないのである。強度面では多少気になる位だ。でも、これであの音を奏でるから驚く、というか、ポイントが何かあるのだと感じる。単純にはいかない、そう、それはアナログの世界なのであるから。

 しかし、今回の試聴は本当に興味深いことが多かった。アナログは本当に面白い、これを実感出来る。

 でも、欲しいなあ、、AC-5&Live18。(笑)

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